三十三間堂(蓮華王院本堂)には、1001体の千手観音像がある。
「1001体の中には必ずアナタとそっくりの顔をした像があります」たいていのガイドさんが言います。
修学旅行の学生などは、一生懸命自分や友達に似た顔を探そうとするが、そう簡単に見つかるものでもない。
なぜなら、説明に少し間違いがあるのだ。
実際には「人が成仏した時の顔がある」なのだ。
つまり、「アナタの死に顔とそっくりの顔の像が必ず一体はある」のである。
だから、三十三間堂の千手観音像群の中で、異様に親近感を持つ像の顔を見た瞬間、その人は死んでしまうのである。
鎌倉時代には、拝観者が死んでしまう事件がよく起きたそうで。
室町時代に入ってから、お寺ではあるまじないをかけて、死者が出ないようにした。
当時千体だった観音像に1体足して1001体としたのである。
奇数は割り切れない。
つまり、命も割れたり切れたりしないという、まじないである。
このまじないは今も効いていて、たとえ自分の死に顔を発見しても、即死することはない。
ただし、死に顔と今の自分の顔が似ているということは、死期が近いということになる。