むかし、あるところに、たいへん気立てのいいよくできた嫁と、意地悪な口やかましい姑が住んでいました。
気に入らん嫁じゃと思っている姑は、いつも嫁につらく当り、ひどい目に合わせていました。
しかし嫁は一言も逆らわず、姑に仕えています。
そうされると姑はなおいっそう嫁がにくくなり、嫁いびりはますますひどくなりました。
ある暗い晩のこと、嫁を使いに出した姑は、恐ろしい面をかぶって、町角で嫁を脅かしてやろうと待ち伏せました。
使い帰りの嫁の前にいきなり恐ろしい顔を出したので、嫁はびっくりして気絶してしまいました。
嫁を驚かして胸がすうっとした姑は、さて面をはずそうとしてギクリとしました。
どんなにはずそうとしても、その面は顔にぴったりとくっついてはずれません。
その恐ろしい面はまるで姑のもとからの顔のように、くっついてしまっているのです。
あちこちの医者にかかっても面を取ることができません。
今までさんざん嫁いじめをしてきた報いでしょう。
自分が悪い姑であったと悟った姑は、寺々を廻って少しでも罪が軽くなるように祈ろうと考えて、旅に出ました。
四国へも渡って来て、八十八カ所を廻り歩きました。
小松の香園寺にもお参りしました。
その時いちばん偉いお坊さんが姑をあわれに思い、面をのけるお祈りをしてくれました。
すると不思議なことに面はポロッと落ちました。
それを「肉付きの面」といって、今でも香園寺にあるそうです。
面のとれた姑は、喜んで国に帰りました。
それからは嫁と仲よく暮らし、よい姑になったということです。