平成17年(2005)11月7日午後2時頃、福井県の火葬場の近くに、不審な車が停まっているのを付近の住民が発見した。
この火葬場は、じつは30年ほど前に閉鎖された、いわば廃火葬場。
この車はエンジンがかかっている状態でクラシック音楽が大音量で流しっぱなしになっていた。
不審に思った住民は、警察に通報した。
現場にかけつけた警察官が火葬場のなかを調べていくうち、おかしなポイントが見つかった。
火葬炉が暖かい状態になっていたのだ。
引き出して見てみると、真っ黒に焼け焦げた炭のなかから遺体を2体発見した。
停めてあった車の所有者は、同市に住む80歳の男性であった。
どうやら火葬炉のなかで見つかったふたりは、この男性とその82歳の奥さんらしい。
車内を調べると、書き置きが遺されていた。
ふたりは、自ら火葬炉のなかに入って点火したようなのだ。
夫は心中の前日、財産の処分先を書いた遺言書を市役所に郵送していた。自宅や田畑、山林など所有している不動産は市に寄付し、預金などはお世話になった人へ渡るようにしてほしい、という内容であった。
この遺言書は1年ほど前から書かれており、どうやらずっと前から心中を計画して身辺整理をはじめていたようだ。
認知症の奥さんを老々介護、旦那さんの身体にも不調があらわれ入院
このときの入院が、不幸な選択をするきっかけになったのかもしれない。
旦那さんは持っていた土地などを市に寄付すると、遺言書に書いた。
しかし、市は「市として有効な活用策が見出せない」として、寄付を受ける権利を放棄し、旦那さんの親族に相続されることになった。