子供のころに実際に体験した話です。これまで誰にも話したないし家族以外は知らないです。
子供時代、親の仕事の都合で短いときは1年、長くても3年で引っ越しを繰り返していました。たしか小学校3年生のときは京都に住んでいました。そのとき住んでいたアパートのすぐ後ろは山になっていて、できたばかりの友達とよく探検に行っていました。
母親からは近くで遊ぶのはいいけどあまり奥まで行くんじゃないよと忠告されていました。しかし、その日は忠告を破り友達3人と奥まで入ってしまいました。20分ほど進むと古い家がありました。非常に古い家で一目で誰も住んでいない廃墟だと分かりました。
私たちは興奮して廃屋の中を探検することに。昔の家によくある平屋、瓦屋根で間取りは3LDKほどだったと思います。リビングらしく場所には古い漫画や雑誌が散乱していて、友達はその本を拾って読んでいました。
私は本よりもこの廃墟に興味があったので一人で奥の部屋へ進みました。その部屋は何もなく、あるのは押入だけでした。何気なく押入れの襖を開けました。
すると押し入れの中に後ろ向きで座っているおばさんがいました。全く想像していなかった光景に私は恐怖や驚きよりも、怒られる!と思ってその場に立ちすくんでしまいました。
しかしおばさんは後ろを向いたままでこちらには気づいていない様子。そ~っと襖を閉めればバレないかもと思い静かに襖を閉めようとしました。襖に手をかけた瞬間、おばさんが突然振り向きました。
その時のおぞましい顔は今でもハッキリと覚えています。真っ黒な目・・・、いや目玉がない。目の部分はポッコリと穴が開いていて真っ黒。歯のない口を開け、顔のあらゆる場所から血が流れていました。
自分でもワケのわからない言葉を叫びながら家を飛び出しました。友達は驚いた顔をして私を見ていましたが声をかける余裕がありませんでした。泣きながら山を下りて家まで帰ってきました。
家に入りようやく落ち着きを取り戻してきたところで、台所にいる母親に先ほどの出来事を話そうか迷いました。山の奥に入ったことがバレると怒られてしまうかもしれない。結局黙っておくことに。置いてきた友達のことはすっかり忘れていました。
私はなんとか恐怖を打ち消すためにテレビをつけました。おそらくテレビへの意識はほとんどなかったと思います。流れる画面をボケーっと見ていただけで、なんの番組を見ていたか記憶がありません。その部屋には押し入れがあるのですが、押し入れの中から音が聞こえた気がしました。
押入れに視線を向けると襖が少しだけ開いて・・・、その中からあの顔がぐちゃぐちゃのおばさんがこっちを見ていました。
私はまた絶叫して台所に走って母親に飛びつきました。「押入れにおばさんがいる!」と泣き叫びました。母親は私が泣き止むのを待って、テレビのある部屋に確認しに行きました。私は怖くて台所で固まっているだけでした。
すぐに母親が戻ってきて「何もいないじゃない」と言いました。母親と二人で部屋を見にいきました。母親が押し入れの襖を開けながら「どこにいるの?」と聞いてきましたが、おばさんはまだそこに座っていて眼球のない目で私をじっと見つめていました。どうやら私だけにしか見えないようです。私はそこで気絶してしまったそうです。
それ以来、私は押し入れが怖いです。それからも3回ほど押入れのおばさんを見ています。泊まった旅館の押入れの中におばさんがいたときは旅館の方に無理を言って部屋を交換してもらいました。
本当に本当に押し入れが怖い。見るたびに少しずつ押し入れからおばさんが身体を出してきている気がするんです。