少女がとても大事にしていた人形。少女はその人形をメリーと呼んでいた。
引っ越しのさいに誤ってその人形を捨ててしまった。
悲しむ少女をなんとか慰めようと両親は新しい人形を買ってあげると約束した。
少女はどうにもならないと分かったうえで納得して涙を堪えた。
新しい生活にも慣れて少女の記憶からメリーという人形の存在は薄れていた。
そんなある日の夜、両親の帰りを待つ少女のもとへ電話がかかってきた。
「もしもし」
『・・・』
「もしもし?どちらさまですか?」
『私メリーさん。いまゴミ捨て場にいるの』
「え?」
そこで電話は切れてしまった。
少女はそこでようやく人形のことを思い出した。
いたずら電話だと思ったがなぜ人形のことを知っているのか不思議だった。
するとまた電話の音が鳴り響いた。
(またかかってきた!どうしよう・・・。もしかしたらお母さんからかもしれない)
少女は少し躊躇したが電話の受話器をとった。
「もしもし・・・、お母さん?」
『私メリーさん。今○○駅にいるの』
そして電話は切れた。
○○駅といえば少女が住んでいる場所の駅だ。
いたずら電話なんかじゃない。少女はそう思った。
そしてまた電話の音が鳴り響く。
(またメリーさんからかも・・・。でももしお母さんだったら・・・)
「もしもし!お母さん!?早く帰ってきて!」
『私メリーさん。今△△商店の前にいるの』
△△商店は少女の家のすぐ近くにあるお店だ。
そこで少女は気づいた。メリーさんが少しずつ近づいてきていることに。
少女は恐怖に怯えた。
(そうだ、お母さんに電話しよう!)
少女は母親の携帯に電話をかけようと受話器に手を伸ばした。
するとほぼ同じタイミングで電話が鳴ってしまった。
少女は受話器を取り、恐る恐る耳に近づけた。
「・・・。はい・・・」
『私メリーさん。今リカちゃんのお家の前にいるの』
リカとは少女の名前だった。
電話の相手は自分の名前を知っているうえに家の前まできている。
少女は電話線を引き抜き、窓から外の様子を伺った。
家の前にはだれもいなかった。
玄関に鍵が掛かっていることを確認して、少女は自分の部屋に向かった。
両親が帰ってくるまで自分の部屋に閉じこもっておこう。
そう思って電話の前を通ったとき、また電話の音が鳴り響いた。
電話線を抜いて繋がるはずのない電話が鳴っている。
少女は恐怖と怒りが入り乱れて混乱しながらも受話器を取った。
「あなた一体だれなの!いい加減にして!」
『私メリーさん。今あなたの後ろにいるの』