もう10年ほど前の話です。
美術を専攻していた私の姉がアトリエに使うために2DKのボロアパート借りました。
その部屋に住むわけでもなくたまに絵を描くためだけに借りた部屋。
当時、高校生だった私は姉に頼み込んでその部屋に寝泊りする許可を貰った。
ちょっとした一人暮らし気分だった。
親には姉の家に泊まるって言ったので特に反対される事はなかった。
まぁ姉の家(正確には姉が借りてる家)には間違いないので嘘ってわけでもない。
一人暮らし初日、ワクワクしながら学校からアパートに帰宅。
戸締りには気をつけるようにと念を押されていたので部屋に入ってすぐ厳寒にカギとチェーンをかけた。
その後はお風呂に入って夕飯を食べ、本を読みながらまったりタイム。
楽しい一人の時間は過ぎていく。
気がつくと11時を過ぎていたので、戸締りをチェックしてガスの元栓を締めて布団に入った。
しばらくして玄関の開く音で目が覚めた。
時計に目をやると夜中の2時だった。
どうやら姉が絵を描きにきたようだ。
わざわざ声をかけて気を遣わせるのもマズイしそのまま眠っていよう。
足音を聞いていると隣の部屋に入っていった。
隣の部屋は画材やらキャンバスが置いてある部屋。
そこで姉は一人でブツブツ言ったりクスクス笑ったりしている。
やっぱり芸術家と変人って紙一重なんだなぁと考えながらいつのまにか眠りの中に落ちてしまった。
翌日の朝、目が覚めると姉の姿はもうなかった。
姉の絵に対する情熱はさすがだなぁと思いつつ学校に出かける準備をして家を出る。
玄関のカギを閉めた時、私はふとある事に気づき恐怖に襲われた。
それ以来、私はそのアトリエに足を踏み入れる事はなかった。