シンガポールのウビン島にある廟(びょう)で、第一次大戦中に不慮の事故で亡くなったドイツ人少女の霊を慰めるために建立されたという。英語ではGerman Girl Shrine、中国語で梅林苑、柏林苑とも呼ばれる。
1900年代始め、ここにはコーヒー農場を営むドイツ人の一家が住んでいたという。しかし1914年に第一次世界大戦が勃発すると、ウビン島にもイギリス軍が上陸した。イギリス軍はドイツ人がスパイ行為をするのではないかと恐れ、ドイツ人家族を拘束してシンガポール本島に移送してしまった。ドイツ人一家にはその当時18歳の1人娘がいたが、イギリス軍に捕まるのを恐れた少女はジャングルの中に逃げた。しかし不幸にも、ジャングルの中をさまよう内に少女は足を踏み外し、崖から転落して亡くなってしまった。
この事件以降、地元住民の間で周辺に少女の霊が出ると噂されるようになった。「夜中にジャングルで白人の少女がたたずんでいるのを見た」とか、「どこからともなく女性の笑い声が聞こえた」などの証言もあるのだという。
少女の遺体は崖下の採石場で発見され、現地の中国人により質素な廟が作られたが、現在の立派な廟は1974年に採石業者により立て直されたものらしい。ところがその頃からおかしな噂が広まった。なんでもギャンブラーの間でこの廟にお参りすると運が上がるという話が広まり、なぜか少女の霊が勝利の女神として信仰されるようになったのだ。このため少女の霊は成仏を邪魔され、いまだに廟内にいるという説もある。
現在でも廟内には化粧品やフレーバーウォーターなどがお供えされている。またバービー人形も祭られているが、これは少女の霊が島民の夢の中に現れ、「人形が欲しい」と言ったため供えられたものらしい。
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