深夜のバイトをしていた頃、残業していたら最終の電車に乗り遅れて家に帰れなくなった事があった。
その日は給料日前で手持ちの金がなくて近くにATMがあるようなとこもなかったから始発が出るまで公園で座ってたんだ。たしか11月頃だったかな。夜は結構冷えるからさ、そのせいかお腹が痛くなってトイレに行ったんだ。
俺が入った時はだれもいなかったんだけど、しばらくして隣の個室に人が入ってきて、どうやら電話しながら入ってきたらしく話し声が聞こえてきた。
ひと気のない公園でトイレの中はシーンと静まりかえってるから、隣の人の声だけじゃなく電話先の相手の声も微妙に聞こえてきた。
「え?うん、分かってるって。あはは!・・・で、なんだっけ?」
『・・なった・・・いつか・・』
「ああ、そーだったな。大丈夫だって、気にすんな。え?うん。・・・うん。そっかー。」
『たしか・・・かけ・・し・・・』
「あー、そうかもしれないね。わるい、ちょっと待ってて」
どんな顔か知らない奴の電話の内容なんて別にどうでもいいし、俺は用を足し終えたから個室から出ようとしたんだ。
そしたら隣からもカラカラカラってトイレットペーパーの音が聞こえてきて、同時に電話先の相手の声もハッキリと聞きとれた。
俺は隣の人が出てくる前に急いでトイレを出て、全速力で駅まで走った。
駅前で震えながらシャッターが開くのを待った。
思い出しただけで気味が悪い。
もしトイレではち合わせてたらと思うとゾッとするよ。