小学校のころ、まだ親の実家で住んでた。
俺はサザエさん一家でいうタラちゃんの立場。
で、祖母・祖父・叔父(まぁカツオだな)・母・父・俺で住んでた。
ちなみにその叔父(以下カツオでいい?)は大学中退して、今で言うニート。
癇癪おこしたりすることもあって、今思えば精神的に病んでたんだろうな。
叔父と俺以外は、みんな仕事なり出かけてるなりでいない日がよくあったんだけど、
そういう時の度に、カツオに「忘れられない怖い思いしてみたい?」だとか、
「頭おかしくなっちゃうことしてあげようか?」とか言われることがあり、何となく怖かった。
で、同じようにカツオと二人だけになった日、とうとうカツオがやらかした。
二回の和室にカツオに連れてこられ、柱のところに後手にして縛られた。
今思えば、なんでされるがままにされたんだって感じだけど、
当時子供だし、カツオ怖いし、抵抗できなかったのかなぁ。
で、いったい何をされるんだって怖がっているうちに、
カツオがテレビ番組の司会者みたいにハイテンションでしゃべり出した。
「はーいこんにちはー!ありがとうございます!
今日はみなさんに忘れられない体験をしてもらいたいと思います!
○○(カツオ本名)最初で最後のチャレンジ!!」
みたいなこと言って、一人で拍手とかしながら騒いでた。
俺はとにかく怖くて震えてるしかできなかったんだけど、
カツオはまるで俺なんていないみたいに、ハイテンションで色々言ってた。(ショーがどうとか天国がどうとか)
しばらく騒いだあとに、急に静かになったと思ったら俺の前に立って、
「おまえ平気な顔で生きてちゃいかんぞ。おまえも悪いって思わないかんぞ」
と言って、横に置いてあった箱から針を取り出した。
俺は刺されるのかと思って、ようやく嫌だやめてと泣き出したんだが、
そしたらカツオは、いきなり自分自身の腹にそれを刺し始めた。
「痛いぞ-!お前痛いぞ-!すげーだろー!!」みたいに言いながら。
俺はもう怖い通り越して、呆然と見てるしかなかった。
5本くらいの針を刺し終わると、カツオは隣の和室との間のふすまを開けて、向こうに置いてあったイスを持ってきた。
そしたらまた最初みたいなハイテンションになって、
「おまたせいたしました!いよいよショーの大目玉です!拍手!!」
っつって、自分で拍手してた。
針も痛そうだったけど、おかしくなってたんだろうな。
で、針と一緒においてあったロープ?を取り出して、椅子に乗ってまた拍手しはじめた。
その時点では俺もまだぽかーんと見てる状態だったんだけど、
カツオがロープをやたらスピーディーに鴨居と首に結びつけた時点で、すげー恐怖に襲われた。
「やめてー!やめてー!」って泣き叫んだんだけど、カツオはもう聞いてない。
「それではみなさん、おめでとうございます!」とか言って、椅子を蹴って首を吊った。
俺はもう怖いやらなんやらで混乱しながらも、ギャーギャー泣き叫び続けた。
1時間くらいして(体感時間ではもっと長かったけど)祖父母が帰ってきて、
上でぎゃーぎゃー泣いてる俺の声を聞いて階段上がってきた。
俺と首吊ったカツオを見てしばらく呆然としてた。
でもようやく祖父が俺のロープといてくれて、祖母が俺のこと抱きしめて一階まで連れてってくれた。
そのまま祖母が付き添ってくれて、一階の祖父祖母の部屋で布団で寝かされた。
その間に祖父は警察だの俺の両親だのに連絡して、彼らとまぁその、処理をしていたらしい。
俺はもう心臓ばくばくしっぱなしで寝るに寝れなかったけど、
祖母が「寝とき、寝とき」って言うから、目つぶって寝たふりしてた。
その後いろんな処理だの簡単な葬式だのも終わり、すぐに俺と両親は引っ越した。
今でも正月や盆に祖父母の家には行くが、二階は怖くて上がれない。
首を吊って動かなくなってからびくんびくんするのとか、その出すものボタボタ出す様子とか、
すげー目に焼き付いてる。
「忘れられない怖い」をさせるってカツオの目標は達成されてるんだろうな、最低なことに。
2ヶ月ほど前で俺も当時のカツオと同じ歳になったけど、なんか複雑だよ。