俺の住む街には,昔からある季節になると「ゆうたくんごっこ」という儀式が行われているという噂があった。一概に「ごっこ」と言っても,子供がするような遊びではなく,かなりヤバい儀式らしい。
俺は子供の頃,どうしてもゆうたくんごっこの詳細が気になり,町内会の会長のおじいさんに聞いてみた。しかし、おじいさんは固い顔をして「絶対に言ってはいけないんだ。」と言って,頑なに話してくれなかった。ただ、俺が必死でお願いするとおじさんはやっと折れたのか「分かった。では、来月の1日にわしが君の家に迎えにいくから来てくれ。」と言われ,俺は大喜びした。しかし、その後におじいさんは「ただし、どうなっても知らないぞ。」と、強く警告された。
次の月の1日になり、おじいさんが俺の家に迎えに来た。俺はおじいさんに真っ暗で窓の閉められた車に乗せられた。車を運転し始めたお爺さんは,「今日のことは絶対に周囲に話すな。何があってもな。」と俺に強く警告した。しばらくして、俺とおじいさんは山奥で車を降りた。
車を降りてしばらく歩くと,俺とおじいさんは周囲がおじいさんだらけの草原のような場所に来た。その中央には椅子とよく分からない大きな人形が置かれていた。ゆうたくんごっこの準備は着々と進められているようだった。すると一人のおじいさんが椅子に座って人形に向かってよく分からないことを大声で言い出した。どうやら大声で呪文を唱えているようだった。俺はこんなものを見せつけられてなんだか損した気分だった。
それから10分もこの暇な光景をずっと見て飽きてきたので帰りたい気分になっていた時,ふと呪文を唱えていたおじいさんがみんなに向かって何か大声で言い出した。すると皆が
口を揃えて土下座をして「ゆうたくんのおな〜り〜」などと言い出した。俺だけ土下座していないのもなんだが嫌だったので,みんなに合わせて俺もみんなと同じことをした。内心,とても恥ずかしかった。その後,土下座が終わり,今度は呪文のじいさんが人形に火をつけて燃やした。その後,人形は跡形も残らずに消えてしまった。灰は一粒も残らず,さらには燃やした痕跡すらない。その後、呪文じいさんが「今日はこれで終わりで
す。ありがとうございます。」と言って解散になった。
その後,俺は会長のおじいさんにゆうたくんごっこがなんなのかを聞いてみた。するとおじいさんは渋々答えてくれた。今から100年以上も前に,村に「ゆうたくん」という少年がいたという。ゆうたくんは人形が大好きで,一日中それを手から離さずに持ち歩いていたという。そのため、同学年の少年や若者からは人形を取られたりしていじめられていた。それに耐えきれなくなったゆうたくんの母親はゆうたくんから人形を取り上げてしまった。それについにゆうたくんは激怒し同学年の男子と若者,町の女性を全員殺してしまい,ゆうたくんも自ら首を吊って自殺した。そのため,町には男の老人だけが残った。その後,老人たちはゆうたくんを供養するためにこの「ゆうたくんごっこ」が行われるようになったという。なお、ゆうたくんごっこの詳細については月の最初の1日に行われるらしく,ゆうたくんを降霊させてゆうたくんの霊にあの世に人形を持ち帰ってもらいゆうたくんを悪霊にさせないのが目的だという。
なお、ごっこは本来もっと長いものらしいのだが、今回は俺がごっこに参加したため,内容を一部変えてごっこを行ったらしい。なぜなら、その省略された内容を男の老人以外が参加している場で行うと,町の男の老人以外の人物が全員◯んでしまうからだという。
しかし、このごっこを行った後になぜか町の男の老人が会長含め全員行方不明になってしまった。これは、ごっこの内容を一部変えたことと何か関係があるのだろうか。