北海道のある場所に「ムーミンの家」と呼ばれる廃墟があります。見た目がムーミンの家に似ていることからそう呼ばれるようになりました。
ムーミンの家にはこんなうわさ話があります。
・火事で燃え尽きた
・火事の原因は一家心中のために家主が火をつけたから
・解体工事中に作業員がどんどん倒れていった
・お祓いをおこなったお坊さんが亡くなった
こんな話を聞いた私は友達を肝試しに誘いました。その友達は霊感が強いのですが怖がりで最初は「やめよう」と言っていましたが、オカルト好きな私を止められないと悟ったのか説得を諦めました。
夏の夜にドライブをしながらムーミンの家の近くまでやってきました。助手席に乗っていた私は不意に背後になにかの気配を感じました。なんとなく振り向いてはいけないような気がしました。
すると運転をしていた友達が「行けない、ムーミンの家はこの辺りなんだけど行けない」と言い出しました。やっぱり怖気づいたのかなと思っていましたが、「なんでだろう、行けない行けない。おかしいおかしい」と独り言を呟いている様子は少し異様な光景でした。
友達の様子が危険と判断した私は「やっぱり行くのはやめよう。そうだ夜景でも見にいかない?」と声をかけると友達はいつもの様子で「いいね、そうしよう。ちょうど良い場所を知ってるよ」と賛成してくれました。
私たちはムーミンの家に行くのをやめて夜景が見える場所へ行くことにしました。友達は無言のまま車を進めます。
10分ほどすると車が停まりました。窓から辺りを見回すとそこは草木が生い茂る墓地の前でした。
「ちょっと!こんなところで夜景なんて見れないよ」と友達に声をかけると友達は「え、なに?なんのこと?」と首をかしげます。「夜景が見える場所を知ってるって言ったでしょ?」と聞いても「覚えていない」と答えるだけ。
いま目の前で起きていることのワケが分からず私が混乱していると突然友達が「やばい!逃げよう!」と叫んで車を急発進させました。
さらに混乱して声が出せない私に友達は「あなたには見えなかったかもしれないけど助手席の窓の向こうに女の人が立っていた。今にも襲い掛かってきそうな顔をしていた」と告げました。私はただただ恐怖に震えているだけでした。
その日は友達に家まで送ってもらいすぐにベッドに入って寝ました。怖かったので全ての部屋の電気をつけたままで。
翌日、話を聞くと友達はムーミンの家に近づいたころから記憶がなくなっていたそうです。気がついたのは私が夜景がなんだのと喋っているとき。何を言っているのかなと思っていると車の外に立っている女性に気づいてすぐに逃げ出したとのこと。
もし気づくのがあと少し遅れていたら今頃私たちはどうなっていたことか。もしかしたら友達には霊が取り憑いていて私たちをあの墓地へと誘いだしたのかもしれません。
ムーミンの家には二度と近づかないと決めました。