すっかり日の暮れた山間の道を走る乗用車。
A・B・Cの三人は昔からの仲間で、きょうもドライブに出かけた帰り道のことだった。
楽しい昔話に花を咲かせていたが、後部座席に座っていたCが、ふと気付いた。
運転手のAが話をしながら、ずーっと、バックミラーでCの顔を見ているのだ。
C「おい、ちゃんと前見て走れよ。」
A「あぁ、分かってるって。」
そう言いながらもAはじっとCを見ている。
しかも、ニヤニヤと口元に薄ら笑みを浮かべて。
C「おい、前見てろって!!」
A「あぁ、あぁ、分かってるって分かってるって…」
しかし、目線は後ろのCに釘付けなのだ。
車は下り坂に入り、どんどんスピードが上がっていく。
さすがにおかしいとおもったCは、助手席のBに声をかけた。
C「B、オマエからも言ってやれって!真面目に運転しろって!!」
すると、Bは後ろをくるりと振り向き、Aのように口元に薄ら笑みを浮かべながらニタリと笑うではないか!!
さらに、Aまでもがくるりと後ろを振り向き、二人してCを薄ら笑みしてニタリと見つめ続けた!
車はさらに加速し目の前に直角カーブの壁が迫る。
もはやこれまでと思い、Cはドアを開けて車から飛び降りた!
次の瞬間
ドーン!!!!!!!
車は壁に激突し紅蓮の炎を上げて炎上した。
A・Bの二人を乗せて。
やがて事故処理の警察官が来てCに事情を尋ねた。
C「あれは絶対何かに取りつかれてたって!!」
興奮して説明するCに警官は「まぁまぁ…」と落ち着かせながらもこう言った。
「取りつかれてたってのは、あながち嘘ではないかもしれん」
「ブレーキの跡が全くなかったからな」