私が体験した話です。
今も昔も霊感というものは、私にはありませんが、なぜか人形に関することで何度が不思議な体験をしたことがあります。
その中で一番怖かった体験をお話ししたいと思います。(ありがちな話かもしれませんが。)
私の家は母子家庭です。
母一人で私を養ってくれていたので、ひな人形を買うお金がなくて、代わりにガラスケースに入った市松人形を買って、リビングに置いてました。
小学校低学年ぐらいまで私は一人っ子だったこともあり、よくお人形遊びをしていました。
特に市松人形さんが気に入っていて、ガラスケースから取り出しては、家の外に持ち出して櫛で髪をといたり、私の飲み物やお菓子を食べるときは、食べさせるマネをしたり、話しかけていました。
市松さんのお顔をみると、すごく優しいお顔で安心できるんです。
小学校3年生以降はリカちゃん人形にはまって、市松さんはそのまま遊ぶことがなくなりました。
お友達と遊ぶのにリカちゃん人形がちょうど遊びやすく、市松さんで遊ぶと周りに驚かれてしまった事もあったので。
でも市松さんは私にとっていて当たり前の存在で、一人で寂しくなると市松さんのお顔をみてなぐさめてました。
高校生の時、阪神大震災を体験したとき、市松さんのガラスケースが壊れてしまい、ケースだけ買う方法もわからないのでそのまま飾っていました。
1か月ほど経つと夢で市松さんがでてきました。
私と市松さんが向き合っていて、市松さんは私の目線に合うように浮いていました。
何も話してこないのですが、なぜか市松さんが伝えたいことを感じ取ることができて
「うん。そうだね。ごめんね。ケースに入れてほしいんだよね。でも、ケースだけどうやって買っていいのかわからないの。明日ビニールをかけて埃がつかないようにするね。ごめんね。」
私は市松さんにそう伝えました。
次の日、数年ぶりに市松さんを抱っこして、そういえば最近触ってなかったな~、と思い髪を櫛でといて身綺麗にしてから透明なビニール袋をカバーのようにかぶせてあげました。
そのあとは、私の夢に市松さんは立つことがありませんでした。
気に入っていたお人形だったこともあったせいか、不思議と夢に出てきたのに怖いと思いませんでした。
母にその話をしたら「そう。あんたに構ってもらえなくて寂しかったんじゃない?」と言っていましたが。
数年後、私は20歳になりました。
私は母との仲が非常に悪くなっており、ある時口論になり私は家を出て行って彼氏の家に泊まりました。
その日の夜、眠っていた時です。
寝苦しくなって、目を開けました。
すると部屋の私の目の前の天井に、市松さんが浮いていたんです。
お互い見つめ合っていたのですが、そのうち市松さんのお顔が般若のように恐ろしい形相に変わっていき、私の方に向かって両手を伸ばして近づいてきました。
多分私の首を絞めようとしたのでしょうか。
市松さんの顔が怖くて一度目を瞑り、そっともう一度目を開けたとき、いなくなっていました。
辺りを見回してもおらず、隣で寝ていた彼氏をたたき起こし、「今うちの人形が来てたんだけど。どこに行ったかな?見てない?」
と聞いてみましたが、(今思えば寝ていたので見るわけないんですが、軽くパニックになっていたんだと思います。)「夢やろ」と言われ、その時初めて夢だったのかと気づいたぐらいでした。
なんせ後にも先にもこんなにリアルに感じた夢など見たこともなかったのですから。
どこから夢で、どこから現実だったのかもはっきりわからないほどなのです。
また寝たら市松さんが怒って出てきそうで怖くて眠れず、夜を明かしました。
その間、なぜ怒っているのか考え、私が出て行ったあとに何か母がしたのかもと、朝の5時まで待って電話しました。
当然喧嘩してばかりだったので、母もずいぶん最初はつっけんどんな態度でしたが、
私が「市松さんに何かした?怒って出てきたんだけど」と経緯を話し所、母はポツリポツリと話しだしました。
どうやら、私が出て行ったあと、腹が立った母は私の荷物をすべて押し入れに入れてしまったそうです。
そのなかに市松さんも、怒り任せに入れてしまったとの事でした。
市松さんを押し入れから出して、きちんと謝るように母に伝えところ、その後私の夢に出てくることはありませんでした。
ただ、これがあまりも衝撃的で、今後なにかあると市松さんから恨みを買うのではという恐怖心が芽生えてしまい、すぐにお寺に預けてしまいました。
その後、この市松さんからは特になりもありませんが、今思い返せば、悪い子じゃなかったのに、私の恐怖心で申し訳ない事をしたなと思います。今は娘がいるので、市松さんを大事にしていればうちの娘も見守ってもらえていたのではと思うと少し寂しく感じます。