対馬には「天道信仰※1」という独自の信仰があって、この信仰の中心人物は天童(天道)法師と呼ばれる伝説の超人、聖人だという。
天童法師は都で元正天皇(一説によると文武天皇)が病気になったおり、生まれながらの超能力を発揮し、天皇の病気を祈祷によって治癒したので、この功績から宝野上人の号を賜ったと言われる。
表八丁郭(はっちょうかく)はこの天童法師の墓所で、天道信仰の聖地となっている。2019年11月20日に放送された『世界の何だコレ!?ミステリー』で紹介されたこともあり、最近有名になったようだ。
神聖な場所は禁足地になることが多いが、八丁郭もオソロシドコロ(恐ろしい所の意味)と呼ばれ、長らく対馬では修験者や僧侶以外の俗人の立ち入ることの出来ない禁足地だった。もし間違って八丁郭に入ってしまった場合は、草鞋(わらじ)を頭の上に乗せて四つん這いになり「インノコ、インノコ(犬の子)」と唱える風習がかつてはあったそうだ。この呪文は「自分は人間ではなくて犬の子なので無礼を許して下さい」という意味らしい。
現在この禁足は解かれているものの、八丁郭に立ち入る際はいくつかののルールあり、これを破った場合は恐ろしい祟りがあるという。以下がそのルール。
1. 八丁郭に入る前には塩で体を清める。
2.八丁郭内で大声を出さない。
3.八丁郭で物を拾って持ち帰ってはならない。
4.八丁郭で転んではならない。
5.天童法師の墓所の前に鳥居があるので、鳥居の前で靴を脱いで裸足になって参拝すること。
6.お墓に決して尻を見せてはならない(墓に向かって背を向けてはならない)。お墓に参拝したら鳥居を出るまで後ずさりして、鳥居から完全に出た後に背を向けて帰ること。
4番の「転んではならない」というのは少し厳しいので、これに関しては一応救済策が用意されている。昔からの言い伝えによると、もし転んてしまった場合は片袖をちぎって身代わりに置いていかなければならないとされる。
しかし今の時代に片袖をちぎるというのは現実的ではない。ようは「自分の身代わりを置く」という行為で、神社などの厄払いで使われる形代(かたしろ)と同じ発想なので、八丁郭に入る際には転んでしまった場合に備えて、自然に分解しやすい木の葉などで形代を作って置くのがよいだろう。
対馬には他にも禁足地が2か所あり、1つは天童法師の母の墓とされる裏八丁郭、もう1つは多久頭魂神社(たくづたまじんじゃ)境内にある古代祭祀場と言われる不入坪(いらぬつぼ)。表八丁郭と裏八丁郭の禁足は解かれているが、不入坪はいまだに一般人の立入は禁止である。
※1 原始的な太陽信仰、山岳信仰や北東アジアの建国神話、さらに本土の八幡信仰(神功皇后+応神天皇)に似た母子信仰が合わさって成立したものと言われている。
天童法師は天武天皇の白鳳2年(673)、対馬の豆酘郡内院村(つつぐん ないいんむら)に生まれたと伝えられる。伝説によれば天童法師の母親が朝日に向かって用を足した時、陰部に日の光が当たり母親は懐妊したのだという(北東アジアの建国神話に多いパターン)。それゆえ天童法師は太陽の子=天童であり、生まれながらの聖人なのだ。
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