初めて呪いをかけたのは小学生のとき。嫌いだった奴が俺の片思いの女子と仲良く喋っていたのを見てイライラしたのがきっかけ。
オカルトが好きだったから本やテレビなんかでよくある呪いの知識はあった。まぁ藁人形とかまでは用意できないから呪いの方法は自分で考えたんだけどな。
黒の折り紙を使った。白い面に嫌いな奴の名前を書いて、黒い面には「骨折しろ」って書きなぐってマッチで燃やした。数日後にそいつがジャングルジムから落ちて骨折した。
俺は呪いの効果が出たと喜んだ。それから数日後に俺も骨折した。それも両腕骨折。ジャングルジムの最上段から落ちた。地面に両腕をついたせいで骨折した。
次に呪いをかけようと思ったのが両腕が治った直後。俺の両腕ギプスを見て笑ったイジメっ子を痛い目にあわせてやろうと思った。
赤い折り紙を人型に切って、白い面にそいつの名前、赤い面に「前歯が折れろ」って書いて燃やした。数日後、そいつが雑巾がけをしているときに滑って前歯を折った。
また呪いが効いたと喜んだ。次の日、俺の顔にサッカーボールが直撃して歯が折れた。鼻血と歯茎からの出血で顔面が血だらけになった。周りのやつらは爆笑していて、片思いの子も一緒になって笑っていた。
次の呪いは学校の昼休み。俺と同じくらいの画力のくせに上から目線で文句をつけてくる奴がいてムカついた。
画用紙を人型に切って、片面にそいつの名前、裏に「指を怪我しろ」って書いて両腕をちぎってやった。数日後、そいつが塾の帰りに交通事故で指を骨折した。骨が飛び出ていたとか。
またまた呪いが効いたと喜んだ。数日後の家庭科の時間に俺はフライパンで指を火傷した。病院に行くと酷い火傷だったらしくかなり腫れた。しかも利き腕だったせいで絵が描けなくなってしまった。
次に呪いをかけようと思ったのは図工の時間。卒業制作で木の本棚を作るっていう課題だった。だけどアホな奴が間違って俺の材料まで使ったせいで代わりの材料が届くまで何もできなかったのがきっかけ。
公園の木に彫刻刀でアホな奴の名前を書いて、釘やドライバーでめった刺しにした。制作に失敗しろって思いながら数分打ち付けたら気がすんだ。
それから数日後、そいつの作品が壊れていた。先生が言うには他のクラスの生徒が遊んでいたときに落として壊したのだろうってことだった。
呪いの効果だ、ざまあみろと喜んだ。俺は本棚を製作中に誤って自分の手にノコギリを刺してしまった。肉を抉った。その怪我のせいで俺は卒業までに本棚を完成させることができなかった。
次の呪いは中学校に入ってすぐ。同じクラスのヤンキーに肩パンをされて壁に後頭部を打ったのがきっかけ。
ノートの切れ端にヤンキーの名前を書いて、その紙を枕の中に入れて殴ったり壁に叩きつけたりした。そのあと紙を取り出して燃やした。
数日後の昼休み、ヤンキーが頭をおさえながら早退した。なんでも足を滑らせて机の横にある体操着をかけるフックが後頭部に刺さったとのこと。
やっぱり俺の呪いを凄いと喜んだ。その日の放課後、自転車で坂道を下っていると突然ハンドルが震えてバランスを崩した。自転車から身体が放り出されて、ガードレールに顔面を強打。骨折まではいかなかったけど顔面が絆創膏だらけになった。
しかも自転車は川に落ちて回収不可能。買ったばかりだったのに。
次に呪いをかけたのは中学2年のとき。担任のメガネ教師に説教をされて髪の毛を掴まれたのがきっかけ。
集合写真のメガネ教師の顔をボールペンで刺してぐちゃぐちゃにしたあと切り刻んで燃やした。数日後、原因はわからないけどメガネ教師は目を怪我したとかで眼帯をしていた。
俺は呪い屋にでもなろうかと思うくらい喜んだ。数日後、公園の遊具で遊んでいるときに手を滑らせて顔から落ちた。ふらふらと立ち上がったあと木の根っこにつまずいてさらに顔面強打。
土が入ったせいか目が腫れた。俺も眼帯になった。
それからは呪いをかけても何も起こらなくなった。俺のお手製の呪いに本当に効果があったのか、それともただの偶然だったのかはわからない。
呪いが返ってくるのに、なんでかけ続けてしまったのかもわからない。そんなのどうでもよくなるくらいムカついていたのかも。