大正時代のはなし
不景気だった年に、岐阜の山の中で炭焼きの男が、子供を二人、鉞(まさかり)で斫きり殺した
奥さんは死んでおり13歳になる男の子が一人いた
そこへ何かの事情で息子と同じ歳くらいの娘を養女にし山の炭焼小屋で一緒に育てていた
その年、炭はなかなか売れず、何度里へ降りても、一合の米も手に入らなかった
最後の日も空手で戻ってきて、飢えきっている子供の顔を見るのがつらく、小屋の奥へ入って昼寝をしてしまった
眼がさめて見ると二人の子供がしゃがんで、何かしているので、傍へ行って見ると一生懸命に仕事に使う大きな斧を磨といでいた
「おとう、これでわしたちを殺してくれ」といったそうである
そうして入口の材木を枕にして、二人ながら仰向あおむけに寝た
それを見て前後の考えもなく二人の首を打ち落してしまった
父親は死ぬことができなくて、やがて捕えられて牢ろうに入れられた
この父親は六十近くなってから、特赦を受けて世の中へ出てきた
だがその後行方不明になったという