俺は子供の頃、郊外の街に住んでいた。
中学校の頃、俺は友人の太郎と和也(仮名)と夜の学校に行って肝試しにすることになった。その内容は、トイレの花子さんを呼んでみたり階段の数が変わっているか確かめるなどといったシンプルなものだったが、俺らはそれ以上の恐怖を味わうことになった。
俺らが肝試しを何事もなく終えて帰ろうとしていると学校の裏庭的なところから何かすすり泣く声が聞こえたような気がした。俺は最初幻聴だと思い気にしなかったが、太郎と和也も聞こえたらしく3人で裏庭に確かめに行くことにした。しかし、肝心の声が聞こえなかった。
和也は「なんか見えたような気がしたんだが・・・」と言ったが、
太郎は「どうせ嘘だろ。」
と言ってその日は解散した。翌日学校に行くと和也が欠席していた。先生に理由を聞くと体調不良で休んでいるという。その日の放課後、俺は太郎と和也の家に様子を見に行くことにした。和也は部屋で横になっており
「俺は今強烈に吐き気がする。お前たちにうつっちゃいけないから帰った方がいいと思うよ・・・」と昨日の元気はどこへ行ったのやら、低い声で俺たちに話した。
その次の日も和也は欠席していた。俺はふとあの日に聞いたすすり泣く声を思い出したが、さすがに偶然だろうと思い特に気にしなかった。その日も太郎と和也の家に様子を見に行った。すると和也は部屋の隅ですすり泣いて「頼むから、今は1人にさせてくれ。もう嫌だァァァァ!!!!」ととんでもなく大きな声で叫んでいた。太郎は和也の家を出た後
俺と同じく前の出来事を思い出したらしく明日学校で裏庭で調査してみようという話になった。
翌日になっても和也は欠席していた。俺と太郎は約束通り裏庭の調査をした。すると裏庭の隅のゴミ捨て場の奥に古びた井戸があるのを発見した。すると太郎はいきなり
「うわっ何やってんだよ!いいから早く逃げるぞ!」と言って俺の手を掴んで運動場まで逃げた。
俺が「一体どうしたんだよ!」と尋ねると
太郎は「あの・・・井戸の中から・・・白い・・・服の・・・女がァァァァ!!!」と大声で叫んでその後すすり泣いた。その日太郎は高熱を出して早退した。
翌日になると和也に加え太郎も欠席していた。放課後に2人の家を訪ねると2人とも重度の精神病のようなものに悩まされているらしく一日中部屋の隅の壁ですすり泣いているらしい。俺は再びあの肝試しの日のことを思い出し裏庭に行くのが怖くなった。
翌日俺はこの地域のことを知っているお爺さんに話を伺った。おじいさんによると俺らが通っていた中学校は高度経済成長期に建てられたらしくそれ以前は広大な墓地が広がっていたという。そして俺があの井戸について尋ねると
おじいさんはいきなり「お前!!!まさか見たのか!!!」と焦った様子で話しかけてきた。
おじいさんは俺のポカンとした様子を見て「よかった。みていないんじゃのう。」と安心した顔になった。
そして俺が「でも、俺の友人が白い服の女がどうこうとか言ってましたよ。」というとおじいさんの顔は再び焦った顔に変わった。
するとおじいさんに「そいつはどこにおるんじゃ!早く案内しろ!」と言われたので俺が太郎の家に案内した。
しかし俺は太郎の部屋での様子を見て驚いた。彼は部屋中の壁紙を剥がし顔はまるで餓鬼のようになってしまっていた。
すると太郎の母親が「昨日精神病院に連れて行ったんですけどお医者さんがなぜかその場で倒れてしまったんですよね。そんでその病院はしばらく閉鎖。一体何があったのか分からず私も混乱状態です。」と言った。
おじいさんは「手遅れじゃったか。」と絶望した顔になった。
俺は話しかけずらかったが和也のこともおじいさんに伝えた。
するとおじいさんは「あまり見たくもないが、見に行くか。」と青ざめた顔で言った。俺は渋々和也の家へ案内した。すると和也も部屋中の壁紙を剥がし顔は餓鬼のようになっていた。
俺とおじいさんが和也の家から出るとおじいさんがどこかへ電話していた。会話の内容はよく聞こえなかったがとにかくおじいさんは焦っている様子だった。
会話を終えたおじいさんは「明日、俺の家に来い。あと、あの2人の母親にも伝えておいたからな。」とだけ言って去ってしまった。
翌日、俺は約束通りおじいさんの家に行った。家には坊主頭の中年の男がいた。しかし、和也と太郎の姿はなかった。
するとおじいさんが「こいつがやってしまったって言うんだ。じゃ、頼むよ。」と言って部屋には中年の男と俺の2人だけが残された。
すると中年の男は「そんじゃ、行くか。」と言って俺をまるで霊柩車みたいな見た目の車に乗せた。
中年男は「いいか、何か変なことがあっても気にするな。目的地に着くまではな。」と強く警告された。途中で前に聞いたすすり泣く声が聞こえたが、男の警告を思い出し、気にせず男からもらったスナック菓子を食べて忘れた。俺は車の中で寝てしまったらしく、目的地に着いた頃には男に起こされた。
俺らが着いた場所は周りに田園風景が広がっているという典型的な田舎町だった。しかし俺にここはどこかと気にしている余裕はなくとにかく助かることを天に祈っていた。
しばらく歩いたのち俺らは寺に到着した。その寺は男が住職をしているらしい。早速寺で俺は広い座敷に案内された。
男は俺に「1日後に俺は迎えに来る。いいか。それまでは何があっても気にするな。絶対にな。」と言われた。その部屋は明かりがついておらず部屋の中央には何やら大きな仏壇のようなものがあるという異様な光景だった。途中で何やら隣の部屋で騒いでいるとが聞こえたが、気にしないことにした。しかし、あれはどう考えても和也と太郎の声だった。
1日後、男が迎えにきた。俺は知らない間に寝てしまっていたらしい。
その後、俺は別の部屋で何故こんなことになったのか詳しい話を聞いた。俺らが聞いたあのすすり泣く声の正体は古来よりあの地に伝わる「ボレイジュ」(墓霊呪)という魔物的なものらしい。それからボレイジュが生まれた経緯について詳しく話してもらった。
昔、あの土地の貧乏な一家で娘が生まれたと言う。その一家は村八分にあっており、その娘が歩いていただけでも悪口を言われたり暴力を受けたと言う。ある日、若者が悪ふざけで町の一角にあった井戸に娘を突き落とした。すると娘は中ですすり泣き、帰らぬ人となった。すると翌日に娘を突き落とした若者が原因不明の精神病にかかってしまったらしい。その後、その噂は町中に広まりその女の霊を見たと言う者は全員原因不明の精神病にかかってしまった。なお、あの井戸を何回も取り壊そうとしても工事関係者が全員精神病にかかってしまったせいで取り壊さないらしい。その後、その女の霊は「ボレイジュ」と呼ばれるようになったらしい。
なお、すすり泣く声が聞こえただけだとまだいいのだがもし見えてしまうと精神病にかかってしまうらしい。なお、その精神病が完全に治るには少なくとも一年はかかるらしい。
その後男は「この2人は長い間になると思うが俺が預かっておく。お前も無闇に変なことするんじゃないぞ。」と言って男と別れた。
その後俺は和也と太郎には一度も会っていないが、今も校区内に住んでいる。今彼らがどこにいるかは分からないが、ちゃんと生活できるまでに回復したらしい。