昔から海のある町にすんでた。
良い海岸があるこの町も近くにできた都市のせいで若者が滅多に来なくなってしまった。
ある晴れた休日、 この日も朝6時ぐらいから海岸に行った。
この海岸にはよく釣れると釣り好きには定評のある波止場があってその日も先客が3人いた。
そのうち1人は近所に住む釣り好きのおじさんで、親しく話せる仲だった。
ただこの日は全くっていうほど釣れず、あとの3人もそんなかんじだった。
そのうえ俺が来てから1時間ぐらい新しい釣り人が来ない。
小さくて、本屋と海岸ぐらいしか暇つぶしの場所がない寂れた町の男は皆、俺と同じことしか思いつかない。
だから天気の良い休日はざっと10人ぐらいこの波止場に来てボケーっとしているものなのだ。
しかしこの日は異様なほど閑散としていた。おじさんと話しているうちに時間はすぎていった...俺の心はなんだか空しくなった。
8時をまわったぐらいかな...
会社の同期が怪我をしたから仕事を代行してくれないかと電話してきた。結局釣りはあきらめて、家に帰った後仕事場まで歩いて行くことにした。
午後になり雨が降ってきた。
なぜかこの日は仕事の疲れがどっと出た。海の匂いが吸いたくなった。
俺は帰り道に今朝の波止場によった。雨の中もちろん誰もいるはずがない。そう思っていた。
しかし波止場には人影があった。今朝の釣り人の一人だった。
その人は海岸に向かってブツブツ何かをつぶやいている。俺はそのひとに「どうしたんですか」って何度も聞いたが返事はなかった。仕事の疲れと、そのひとの気味悪さでもっと海の匂いが欲しいという衝動にかられた。
翌日、朝刊に自分の町の事件が一面に貼られていた。
海岸から3人が失踪したという。
昨日の自分を思い出し、恐怖を感じた。
「そんなことより仕事に遅れる‼️
」
俺は気を取り直して今日も満員電車に乗った。