俺は、一人暮らしの大学生。疲れたからだを引きずるようにしながら、夜道を歩いて、マンションに着く。鍵を開けて誰のいない部屋に入った俺は、リビングのところで足を止めた。今朝に比べると、物の位置が微妙に変わっている気がする。僕はスマホを手にして電話をかけた。相手は、実家の母さんだ。
「もしもし。母さん、今日うちに来た?」
「行ったわよ。散らかっていたから片付けておいたけど」
「来るときは連絡しろって言っているじゃないか」
「あら、言ってなかった?」
何かあったときのために合鍵を渡してあるんだけど、この調子でしょっちゅう家に連絡なしにやってくるのだ。そして俺は、来るときは必ず連絡するように言ってから電話を切った。
2週間後
いつも通り言えに帰った僕は鍵を開けて部屋に入った瞬間違和感を覚えた。またかと思っていると、母さんの方から電話がかかってきた。母さんの話によると、僕の部屋の片付けをしているとき、家に荷物が届くことを思い出して、慌てて帰ったらしい。
「合鍵を忘れてきちゃったの」
「それってつまり、鍵をかけずに.....」
僕のかすれた声に重なるように、背後で床がミシッとなった。