「おまえの病気はおっかない」
祖母に言われていた言葉が高校生になった今になって俺を苦しめた。
憧れの高校に入ることが出来た俺は寮に住むこととなった。
実父が死んでから家族から見放された自分にとっては最高の転機だと思い込んでいた。
中学1年生のとき、俺の実父は死んだ。元々実父と仲良くなかった俺は正直全然ショックなんて受けなかったし、逆に家庭の権力を握る父の束縛から解放されて清々していた。そんなことより、好きだった祖母の態度が冷たくなったことが一番ショックだった。祖母の口数は父の死を通して明らかに減り、酷く他人行儀になった。何を話しかけても青白い顔でため息をつくだけで今までの優しさはどこかに消えていた。ただ時々「おまえの病気はおっかない」とつぶやくだけ。俺が病気だと?祖母の言葉にそのたび疑念を抱いたが祖母を指摘することはできず、それどころかどこか罪悪感というかうしろめたいという感情が湧いていた。しかし祖母が死んでからその感情はどこかに消え失せた。
ひとり身となった俺は父が残した僅かな貯金を切り崩し頑張って勉強した。憧れの高校は自分の学力を大きく上回っていたが必死に勉強した結果見事合格することができた。家から離れた高校では寮生活の必要があった。寮費は安く、仲間も多かったため俺は信頼のできる友達を作ることが出来ると思った。俺は仲間に積極的に絡んだ。その結果同じ寮に住む仲間とはすぐに打ち解けた。これこそ順風満帆な生活。どこか知らない過去の自分が変わっていくような気がした。
しかしそんな充実した生活は一番信頼していた友達の一言によってかき消された。
「おまえの病気は気持ち悪い。おまえとは一緒にいたくない」
俺はショックで気を失った。
目が覚めた時、俺は病院にいた。
友達は殺された。俺も下腹部を刺されていたらしい。俺は悲しみの中、どこか仕方がないかと思い、また深い眠りについた。
次に目が覚めたとき...
俺は誰かの叫び声と遠くで聞こえる救急車のサイレン音に包まれながら宙の風を切っていた。
俺は夢心地のなかでずっと抱えてきた不安から解き放たれた。